つい先程、N県警の捜査一課に『新人研修』として、唐突に訪ねてきた青年の名前は、雪弥。

 緊張感を煽る美貌を持った気族風の宮橋とは、対照的な小奇麗さをした青年だ。灰色と蒼色が混じり合ったような、不思議な色合いをした明るい髪をしている。そのせいか、形のいい黒い瞳がやけに浮いて見えた。

『えぇと、雪弥です。その……L事件特別捜査係はどこですか?』

 別県警から、試験的な新人研修プログラムとしてきた二十四歳。

 先程、入室の際に刑事達はそうざっくり『自分達の上司』に疲労感たっぷりの引き攣った表情で、そう紹介された。しかし端整な顔立ちは童顔寄りで、小奇麗さも際立ってか、むさっ苦しいこの捜査一課に学生が一人紛れこんだような場違いな空気感があった。

「……なんか、向こうの部屋だけ空気が違う気がする」
「下の階にいる女達が見たら、きゃーきゃー騒ぎそうだな……」
「つか、新人研修なんて初耳なんだけど」
「しかも宮橋さんのところか?」
「煙草休憩に行っている三鬼が戻ってきたら、まずくないか?」