「『それ以下』という場合も、あったりするんですか?」
気付くと雪弥は、そんな事を尋ねていた。
薄暗い中、地図を腕時計のライトで照らし出していた宮橋と、そして風間の目が雪弥へと向く。
「たとえば、僅かの水しか入れなかったりしたら、水を溢れさせるのと同じくらい〝罪〟だったりするのでしょうか」
抽象的な言い方に、風間がきょとんとして不思議そうにする。しかし、それを聞いた宮橋は、どこか憐れむようにそっと目を眇めていた。
「雪弥君。それを選ぶのは、人だ。その人間が選んだ自分の〝運命〟を、悪く言ったり非難するモノなど、いない」
本当にそうなのだろうか、と思ってしまう。先程、雪弥は彼が『それ以上』と口にした時、自分にその経験がない事に気付かされた。
望んではいけないと、ずっとセーブがかっているような息苦しさを自覚した。
思い返せば、唯一、それから解放される瞬間は、仕事をしている時だった。手伝いとして特殊機関に入ってから、ずっと途切れずに〝仕事〟が続いている事を、心のどこかでホッとしている自分もいた。
気付くと雪弥は、そんな事を尋ねていた。
薄暗い中、地図を腕時計のライトで照らし出していた宮橋と、そして風間の目が雪弥へと向く。
「たとえば、僅かの水しか入れなかったりしたら、水を溢れさせるのと同じくらい〝罪〟だったりするのでしょうか」
抽象的な言い方に、風間がきょとんとして不思議そうにする。しかし、それを聞いた宮橋は、どこか憐れむようにそっと目を眇めていた。
「雪弥君。それを選ぶのは、人だ。その人間が選んだ自分の〝運命〟を、悪く言ったり非難するモノなど、いない」
本当にそうなのだろうか、と思ってしまう。先程、雪弥は彼が『それ以上』と口にした時、自分にその経験がない事に気付かされた。
望んではいけないと、ずっとセーブがかっているような息苦しさを自覚した。
思い返せば、唯一、それから解放される瞬間は、仕事をしている時だった。手伝いとして特殊機関に入ってから、ずっと途切れずに〝仕事〟が続いている事を、心のどこかでホッとしている自分もいた。