雪弥も、不思議に思って宮橋を観察していた。彼はまるで、別の空間でもその目に映しているかのように〝何か〟を注視している。

「――蜘蛛の糸、だ」

 ややあってから、宮橋が口を開いた。

「蜘蛛? それでどうやって、魔法みたいにここ侵入して、魔術痕跡すら残さずにあっさりと魔法みたいに消えちまうわけですか?」
「恐らくは、引っ張り上げた際に残ったものだろう、とは思うけど」
「引っ張り上げた? 他に協力者がいると?」

 風間に尋ねられた宮橋が、少し唇を開きかけて――一旦閉じた。

「僕もよくは分からない。もう半分は消えかかっている」

 話を終わらせるかのように宮橋は視線をそらすと、そのまま地図へ目を戻す。

「風間、この業界では少なからずある事だろう。もう使われているんだから、諦めろ」

 ばっさりと宮橋が言った。

 雪弥は、あまりにも急に終わらせられたものだから、小さな違和感を覚えた。けれど付き合いの長い風間が、なんとも思わなかった様子を見て質問をやめる。