「もしくは、偶然にも手にした人間が影響を受けて、まるで自分が考えたかのように鬼になる事を望んで動きだすのを防ぐために、だよ」

 そう口にしたのは、宮橋だった。

「ああいうモノは、人を呼ぶ。だからこうやって、結界の中に封印しておくわけさ」
「ふうん。人を呼ぶ、というのも不思議なものですね」
「んなの、ごろごろあるんスよ新人君。俺としては、趣味の蒐集が仕事になって何より。まさか保管庫に需要があるとか、無理してサラリーマンになったばっかり当時は、全く思わなか――あああああああああ!?」

 不意に風間が、仰天した悲鳴を響かせた。宮橋が、心底うるさいと言わんばかりに片手で耳を押さえている。

「いきなりなんだ、煩いぞ」
「だ、だって、み、みみみ宮橋先輩、俺の、えっ、えええええぇぇ」
「きちんと話せ。分からん」

 そんなやりとりのそばで、雪弥は、彼が見ている方へ目を留めた。

 その途端、風間の驚きっぷりの理由が分かって「あ」と声を上げた。