「元々、これ自体外の倉庫だったんだよ。こっちの建物に繋げるように増築して、この扉はその際に〝その手の専門家〟にもらったやつなんだ」

 じっと見ていた雪弥が、初めての来店である事を気遣ったのか。施錠をがちゃがちゃと外していきながら風間が言った。

 すると暇を潰すように、形のいい唇を少し引き上げて宮橋も教えた。

「雪弥君、この扉は、元々いわくつきの物件にあったものなんだよ。そういった物は、使いようによってはいい術具になる。実際、外結界の要としてかなり役立っている」
「はぁ、なるほど……?」

 どこかの廃墟にでもあった鉄の扉、というのはなんとなく分かった。でも正直、宮橋が何を言っているのかはよく分からない。

 そんな事を思っている間にも、風間がやけに厳重に施錠されている最後の鍵まで外した。

「こっちへどうぞ」

 ここから向こうが、店内の最奥。新米刑事であると思われているせいだろうか。風間が宮橋に続いて、初対面の雪弥を見て手で柔らかにそう促した。