「とはいえ、君がこうして来なかったとしても、小楠警部がそろそろまた新しい誰かを用意してきそうな気はしているんだけどね。時間の問題かな」

 扉の向こうに目を流し向けて、宮橋がそう言う。

「ああ、そういえば、単独行動は好まれていないとは聞きました。それなのに相棒が長く続かない、とか?」
「言っておくが、僕が拒絶しているわけじゃないぞ、相手が『勝手に辞退していく』んだ。ウチでは必ず二人以上とされているけれど、まぁ、何人連れてこようと同じさ」

 どこか開き直っているとも、もとから期待してもいないとでも取れるような口調で、彼はつらつらと述べる。

「何せ彼らは、理解し得ない事を畏怖する。僕ではなく『目に見える事しか信じない』」

 思案気に言いながら、彼は意味もなく腕時計に触れる。

「もしそんな事も飛ばして、真っすぐ僕自身を見て、信じてくれるような誰かが相棒になってくれたのなら、――……僕は何よりも大事にするだろうけれどね」

 ぽつり、とこぼれた声は、本心かただの建前か。