そこで宮橋が、本題を切り出すようにして美麗な顔をチラリと顰めた。

「緊急を要する。だから、実際に中を改めさせてもらう」
「えぇぇ、いきなり来ておいて、結局は口頭確認だけで終わらす気も全くないんですか!?」

 風間は「あの」やら「その」やらと、宮橋を中に入れたくない様子だ。他の客もいないというのに、焦った感じで両手で拒否を示した。

「すみません宮橋さん、できれば遠慮してくださいませんか。あの、来るなんて思っていなかったから念のための準備もしていないですし、その、もしかしたら〝本物〟であるあんたが入ると、他の新しい商品に影響が出るかもしれないし――」

 よく分からない言い訳が、しどろもどろに続く。

 雪弥はその様子を観察して、なるほどと自分なりに推測する。どうやら『面倒事は避けたいので出来るだけ入れたくない』とでも言いたいようだ。

 その時、ふと宮橋に流し目を寄越された。

 一体なんだろうと思って、横目にパチリと目を合わせた途端、宮橋が雪弥に『やれ』と顎で指示してきた。気付かずに風間は話し続けている。