宮橋がちらりと考え、それから少しもしなううちに珍しく素直に手を離す。

「よし、いいだろう」

 解放された風間が、直後、自分の頭を両手で揉みほぐしにかかった。「めっちゃ軋んだ」とぶつぶつ言うと、若干涙が滲んだ目で、宮橋を見つめ返す。

「俺のところの〝結界〟は、引き続きほつれ一つなく完璧ですよ。ネズミ一匹入れないっス。だから皆、ワケありは〝ウチに預けて〟もいくわけで」

 風間は「それにですね」と、頭から手を離して姿勢を戻しながら続ける。

「レア級の〝お宝〟や危ない代物は、何重にも結界と鍵を掛けてある奥の倉庫にしまいこんでいるんです。そこは、たとえ宮橋先輩だろうと突破できませんよ」
「ほぉ。つまり、盗まれるはずがない、と君は言いたいわけか」

 回答を聞き届けた宮橋が、ふっと笑みをもらして鷹揚に頷く。

 風間が、言い方にまずった、というような表情を浮かべた。雪弥も、なんだかちょっと嫌な予感がした。

 と、宮橋が足元の砂利をざりっといわせて偉そうに腕を組む。