彼は、三秒で出てこなかったから本当に、車に拳を落としたのか。

 それはそれで過激な、と、理不尽なその状況を想像した。呑気に首を捻っている雪弥をよそに、風間と呼ばれたその男が宮橋へ続けて言う。

「今日は、一体なんの用なんすか? 試しで相棒にさせられたとかいうあの若い刑事、結局は俺が渡した〝厄避け〟もあって、五体満足で無事だったんでしょう? 商品のいちゃもんを付けられる理由はないと思いますしっ」

 慌てっぷりな口調で言いながら、風間はぐいぐいと戸から宮橋を遠ざける。

「というかっ、宮橋先輩! 大学時代からずっと思ってたんですけど、俺をいびって楽しいっすか!?」
「知りたいと言って僕に接触してきたのは、どこのどいつだったっけ?」
「あ~……まぁ、それが俺の運のつきだよね。でも後悔してないっすよ!」

 なぜか、風間がバッチリいい顔で親指を立てた。

 と、そこで彼が、ふと気付いたように雪弥の方へ目を向ける。

「ん? こちらさんは……?」

 ぱちり、とようやく互いの目が合う。