「向こうに味方している魔術師風情が〝この僕の〟裏をかいて、悠々と安全な場所で高みの見物をしているかと思うと、心底腹立たしい」

 この人、ただ、負かされた感じがして嫌だったりするのかな……。

 雪弥は、昨日今日過ごしてきた彼の性格から、判断に迷った。とはいえ、それが個人的な理由なのかどうかは置いても、明確になった点が一つ。

「宮橋さんが、一連の元凶共に対して怒っている、というのは理解できました」

 ここにきてようやく、昨夜まで宮橋が口にしていた『君に怒っているわけではない』という台詞を理解できた。

 言葉数が多いと思ったら、謎掛けのように少なくもある。

 うまく掴めない人だ。魔術とやらの下りについても、よく分からない。だが、少女を意図的に鬼化するために不思議な着物が使われたらしい、とは理解した。

「その着物が、持ち出されたのか否か。だからまずは、置かれているという場所に向かっているわけですね」

 前置きの説明もあって、それは正しく理解できた。その不思議な着物とやらが、本当に盗み出されているのかの状況確認も含んでいるのだろう。