そう言ったかと思うと、宮橋がテーブルから足を降ろした。

 そのまま腰を上げて、テーブル越しに手を伸ばしてくる。その動作を不思議に思って見つめていると、唐突にトンっと長い指先で額をつつかれた。

「急になんですか?」
「君に、僕と、ここにいる連中を殺させないための『ちょっとしたおまじない』さ」

 よく分からない事を言った宮橋が、ドカリとソファに座り直して腕と足を組む。

「そもそも『相談所』のごとく君を押し付けられて、僕はかなり腹立たしい。こっちは単独行動を好んでいるわけだが、もうしばらく一人で動けるだろうと思っていた矢先、こうしてタイミング良く間を潰すように『相棒(きみ)』を寄越された事もあって、正直かなり苛々している」
「はぁ……。あの、宮橋さんって、自分に正直な方(かた)なんですね」
「当たり前だろう、何故僕が我慢しなくちゃならなんいだ?」

 八つ当たりするような声で、宮橋がズバッと言い切る。

 なんだか、自信しかないというような決定的な物言いや態度が、どこか少しだけ兄の蒼慶を思わせた。財閥の御曹司って、みんなこんな感じなのかな……と雪弥は思ってしまう。