――とはいえ、腑に落ちない。

 雪弥は、車窓に腕をよりかからせて頬杖をつく。窓ガラスに、学生とも間違われそうな小さな顔が映り込んでいて、ちょっとふてくされたような表情が浮かんでいる。

「あんなモノを寄越される覚えも、全くないんですけどね」
「恐らくは、鬼の男とはまた別件の用だろうね。ついでに誘い込んだ感じもある」

 宮橋が、覚えがないという雪弥の意見については、肯定するようにそう言った。

「悪趣味であるのを考えると、ただただ前運動がてら、君に〝オモチャをプレゼント〟して、見物したかっただけのようにも思えるんだがね」

 まるで独り言のように呟かれる彼の声が、やや低くなる。

 雪弥は、ピリッとした空気の変化を感じた。頬杖をといて目を向けてみると、前方を睨み付けている宮橋の美麗な横顔があった。

「宮橋さん、もしかして怒ってます?」
「人を人だとも思わないやり口が、気に入らない。僕は魔術師として中立のつもりだけど、さすがに考えが変わりそうだ」

 言いながら、宮橋の手がハンドルをギリッと握る。