「実在している『鬼の着物』というやつが、本当にこの地区に?」
「勿論、正真正銘の『怨鬼の衣』だ。仕事と趣味をかねて、そういったモノを収集して保管している奴がいてね」

 アクセルをやや強めに踏み込んで、宮橋の秀麗な眉がやや寄る。

「昨日、君に接触して来た、あの鬼一族の大男がいただろう」
「ああ、そういえばいましたね。三日後、だなんて、わざわざ〝予告〟されて言い逃げされました」

 思い出したら、胸に不快感が蘇ってきた。すると宮橋が「落ち着きたまえ」と横から口を挟んできた。

「ご丁寧に三日〝用意の時間〟をくれたと考えれば、都合がいいだろう。そいつとは別に、魔術に詳しい奴も確実にいる。実在していない物を引っ張り出す事は不可能、とすると、残される可能性は、そこから『怨鬼の衣』が魔術具として持ち出された事だよ」

 そういえば、昨夜の廃墟で魔術師がどうのと言っていた。おびき出したのも、あの鬼の一族とかいう大男と同じく、自分が狙いだったのだ、とか。