「はぁ。よく分からないのですが」

 思わず本音を口にすると、宮橋が見当違いだとでもいうように笑う吐息をもらした。

「別に、君が〝そう〟考えるのなら、それでもいいよ。そもそも分からなくてもいい」
「また人の考えを読んだようなタイミング……」

 宮橋は、そんな雪弥の疑問の呟きを聞き流して、ギアを変える。

「僕はそうありたいと思った事はないけどね。とある魔術師に役目を押し付けられて、立ち位置的には『魔術師』だ。――魔術師ってのは、理解して欲しくてモノを語るわけじゃない。だから、内容によっては別に君が分からなくてもいいんだよ」

 それが、役目の一つみたいなものだから。

 そう続けられた言葉が、耳にこびりついた。雪弥は不思議に思って、しばし彼の大人びた端整な横顔を、じーっと見つめてしまう。

「そんな『怨鬼の衣』だが、僕は、その一つが置かれている場所にも覚えがあるんだ」
「え。そうなんですか?」

 唐突に切り出された宮橋の本題に、雪弥は少し目を丸くした。