青いスポーツカーは、あれから三車線の国道を真っすぐ走り続けている。

 車の走行は、多くもなく少なくもなくといったところだろう。雪弥のいる助手席の車窓からは、向こうの町並みに立派な県警本部の建物も見えた。

「確信を持って車を走らせているようですが、目的地は決まっているんですか?」

 ふと、雪弥はそちらから宮橋へと視線を戻して尋ねた。

「彼女が羽織っていた着物を覚えているかい?」

 宮橋が、一度だけチラリと横目に見て確認してくる。

 昨日、追いかけた廃墟ビルでもナナミの姿は見掛けた。その際の薄暗い中でも、やけに着物が鮮明に浮かんでいたのは覚えている。

「上品な柄の着物だったのは覚えていますよ。何か関係が?」
「もしかしたら、という推測が一つある。僕は、あの柄に覚えがあって、あの手の着物と想定したうえで考えると可能性はかなり高い」

 宮橋が言いながら、ギアを切り替えた。

「普通、人が〝見えない領域〟に引きずられる場合は、いくつか条件がはっきりしている」

 前の車を追い越して、次の車もあっさりと車線変更で追い抜いていきながら、彼がそう言った。