「君は、君自身を知るべきだろうか」

 またしても、奇妙な台詞を投げかけられた。

 雪弥は、不思議とそれが自分自身の意見を求める問い掛けだと分かった。何か、選択を提示されているような気がした。

 ――でも、結局のところ、その感覚も途端に曖昧になる。

 何を確認されて、そう伺われているのか分からない。だから沈黙していた。ぼんやりと考えながら見つめ返していると、宮橋が視線を前へ戻し車を動かし始めた。

「君が知ったところで、彼らが心配しているようなことなんて起こらない気もするのだけどね。実際、君は、何も〝知ろうとしない〟し〝聞こう〟とも感じていない」

 独り言のように思案げに言いながら、スポーツカーを車道へ出した彼が、ギアをチェンジする。

「それが良いのか悪いのか、僕は考えあぐねいている」

 そう呟いた宮橋が、車の走行が安定してすぐ「さて」と言って、声の調子を戻した。

「彼女を捜す」