『ああ、ひさらぎ』

 ソレは、なんという感情かよく分からない声で、そう口にする。

『そして初めての、我が友よ』

 怒りは、とうに消え失せていた。ただただ誇らしげに地を駆けた。ならば、その妙な名で我を呼ばせてくれよう、とソレは答え――。
 
             ※※※

 とても、妙な〝夢〟を見た気がする。

 近くのファーストフード店で、雪弥は朝メシを食べながら、ふと思考が暇になった拍子に回想した。

 内容は、よく覚えていない。

 四肢で地を駆ける、何モノかの夢を見たような気はしていた。

 数時間前、雪弥は、泊まった宮橋のマンションで起床した。適当に腹越しらえをする事になり、スポーツカーで近くのファーストフード店に立ち寄ったのだ。

 朝の時刻、出入りする客は意外と多い。客層は社会人から学生まで幅広く、席についていた客の顔ぶれも、半ば慌ただしそうに変わっていっている。

 県警もある都心のド真ん中だ。

 入店した際、宮橋に『いつもこんな感じだよ』と教えられて、そうですかと答えたのは数十分前の事である。