寝るんならこのソファ、借りてもいいのだろうか。

 この一本を飲んだらひとまず寝よう。一応は仕事中みたいなものだ。雪弥が続く静けさの中でそう考えていると、向かい側で宮橋が片足を楽に上げて「で?」と言ってきた。

「君はずっとうじうじと、何を悩んでいるわけだ?」

 唐突にそう問われて、ハタと考えが止まる。

 目を向けてみると、宮橋はソファに上げた片足に腕を引っ掛けて、残り少なくなったビールを飲んでいた。全部降りている癖の入った前髪が、形のいい目元にかかっている。

「出会い頭、相談役は引き受けない、とかなんとか言ってませんでしたっけ?」
「ただ聞いてやるだけだ」

 だから言え、と相談とはと思えない一方的な姿勢で宮橋が述べる。

 いきなりそんな事を言われても困る。そもそも自分に、相談するような悩み事なんて――。

「ずっと考えている事があるだろう」

 宮橋が、合わせたようなタイミングで口を挟んできた。

「人はそれを『迷い考えている』という」

 そう言われて、ふっと頭に浮かんだのは先日の兄の顔だった。