「君、なんて生活をしているんだ」

 なんか、全力で(あわ)れまれている気がする。

 ここからだと宮橋の顔は見えないが、身体が若干震えている感じもあって、雪弥は反応に困ってしまった。あなたの冷蔵庫事情が僕は心配なんですけど……と、ソファに座り直した彼は思っていた。

 ひとまず二本目のビールをあけて口にした。しばらく飲んで待っていると、宮橋がようやく顔を上げてこちらを見てきた。

 しばし雪弥は、彼と目を合わせていた。

 でも言葉をかけてくる様子はなくて、じっと見つめてくる宮橋の表情は固い。

「宮橋さん。それ、一体どういう感情の顔なんですか?」
「もうとりあえず色々、君という人間が僕の予想を斜め上に裏切ってくるな、と」
「僕にとっても、宮橋さんがまさにそうなんですけど」

 雪弥は、間髪入れず答え返してビールを飲んだ。そもそも数時間前までスーツ姿で動いていた人と、こうして私服で楽にして飲んでいるというのも不思議なものだ。