すると、美しい顔に不機嫌面を浮かべていた宮橋が、思案げにソファへ背を預けた。よそへ流し向けられた切れ長の明るいブラウンの目は、やっぱり綺麗すぎて精巧な西洋人形(アンティークドール)のように見えた。

「――とはいえ、これもまた奇縁か奇遇か。運命とは分からないものだね」

 ぽつり、と彼が独り言のように言葉を呟く。

「『鬼』繋がりとは」

 それはどういう意味ですかと尋ねようとした矢先、宮橋の目がパッと戻された。雪弥がちょっとびっくりして口をつぐむと、彼が長い足をどかっとテーブルに上げた。

「僕は先に連絡をもらって、君の上司からも説明を受けて『君が何者か』は知っている。その上で尋ねたい――君なら、このフロアの人間をどれくらいでヤれる?」

 唐突に、親指で開いている扉の向こうを示されて問われた。

 なんだナンバー1は説明済みか。そういうのは先に教えておいて欲しかったなと思いながら、雪弥はそちらへとチラリと目を向けた。