「君、僕の事を一体なんだと思っているんだ?」
「え? 図星だったら、なんか怒るところもある人――あ、嘘です。すみません口が滑りました」

 宮橋がスッと真顔で拳を上げるのを見て、雪弥は反射的に説得口調でそう言った。落ち着いたのを見るなり、にこっと笑いかけて言葉を続ける。

「それに、僕のせいで苛立っているのは分かっていますから」

 今日一日だけで、なんか結構怒られた気はしていた。これは自分が悪いのではないのではなかろうか、という部分もあるが、頭を数回ほど鷲掴みにされた感覚は覚えている。

 それでいて中には、確かに自分のせいだろうなと思える失態もあった。それは刑事として仕事をしている宮橋に、確実に迷惑となった事だろう。

 だから雪弥は、反省しています、という意味も込めて小さな苦笑を浮かべた。

「ほんと、今日はすみませんでした」

 ちょっと頭を下げつつ謝った。

 そうしたら宮橋が、またしても論点違いだと言わんばかりに、鼻から小さく息をついた。