「あの、僕の目に何か……?」
「いや? 目だけは『代々全く同じ』なんだな、と思って」
「おなじ?」
「印みたいなもんさ」

 宮橋がつまらなそうに腹の上で指を組んで、よそを見やる。

「分かりやすいところに『印』を置く。それは目的が違っていようと、いつだって変わらない部分なんだよ。けれど大事なのは印じゃなくて、それに相応しい中身があるかどうかだ」

 どこか含むような笑みを返された。ふっと浮かべられた微笑は、あやしげでいて魅力的なほどに美しい。

 でも、質問を求めているようではない。

 つまり、この護衛対象者にとるべき正しい応対は、沈黙。こちらに理解せよとは要求していない。

 コンマ二秒、そうエージェントとしての思考が勝手にカチカチと働き――雪弥は、だから結局は同じくして、ただぼんやりとそれを眺めていた。

「ソレを自然とやってのけるのも、どうかとは思うけれどね」

 宮橋が、どちらともつかない笑みで不意にそう言う。

「子供みたいでもあるのに大人。純粋でいて非情――君は、ちぐはぐだ」

 言葉が耳元を通り過ぎる。まるで言葉遊びみたいだ。