「ところで、その違和感しかない目をどうにかしてくれ」
「目、ですか?」

 また唐突だなと思いながら、雪弥はキッチンカウンターの向こうに入った宮橋に尋ね返した。

「ここは外でもないのだから、君が上司やらなんやらのアドバイスか命令に従って、コンタクトをしている意味はあるのかい?」

 冷蔵庫を開ける音、探る音と共にそんな宮橋の声が返ってきた。

 無駄で余計な質問は嫌っている刑事(ひと)。雪弥は、相棒としている間の条件を突き付けられた時の事を思い返しながら、不思議に思いつつもコンタクトを外しにかかった。

 ドライヤーで乾かして間もない髪が、まだ熱を持っていてふわふわと指先に当たる。室内で静かに回る冷房が、その灰に蒼みがかったような色素の薄い髪をひやしていく。

「家にいる事は少なくてね。もてなしは出来ないよ」

 がさごそと聞こえる音の向こうから、宮橋がそう言ってきた。

 互い、歩き回っている最中に、腹に物は入れていたので空腹感はない。しかも菓子屋の前を通った際には、何故か宮橋がテンションを上げて菓子を結構押し付けられた。