「あ。そういえばこの前、マンションの外壁の一部を壊しましたね……」
「君、その正直なところ、どうにかした方がいいぞ。台詞のタイミングを間違えると、誤解で一気に信用を失うからな」

 世代が一つ上の先輩として、宮橋が言い聞かせるように述べた。

「ちなみにウチで同じ事をしたら承知しないぞ」

 見下ろして、ビシリと指を向けられてしまった。

 あれは僕が悪かったわけじゃないんだけどな……と雪弥が思っている間にも、宮橋はキッチンへ向かって行ってしまう。言葉足らずだった説明は続けられそうにない。

「――まぁ、見えたから分かるけどな」

 諦めて口を閉じた矢先、そんな声が聞こえて雪弥は離れて行く背中へ目を戻した。

「全く、君も面倒な事になっているなぁ」

 言いながら、宮橋が肩越しにひらひらと手を振ってきた。

 言葉数が少ないというか、唐突というか。いつも脈絡がなくて、彼の発言はよく分からない。けれど好き勝手喋っているみたいなのに、不思議と自己完結ではなく疎通しているかのようだった。