この人、僕の行動を機関が把握しているのを知っているな。

 とはいえ、この状況が外にいる夜狐から見えているのかは知らないけれど。

 雪弥は宮橋の後に続いて歩き出しながら、どうしてか以前、夜蜘羅と初めて接触した際の事を、夜狐が全く探知していなかった事を思い出していた。

             ※※※

「今日はもう遅い。次はまた明日だ」

 建物の外に出たところで、宮橋が静まり返った街の夜空を見やってそう言った。

「生憎僕は、休まないまま翌日も動くなんて事はしない」

 結局、例の女の子の保護と捜索に関しては、本日のところはここで終了だ。雪弥はそう理解すると、少し考えて「分かりました」と答えた。

「確かに夜も遅いですからね。勤務時間外の長い残業みたいになってしまって、本当にすみませんでした」

 そもそも自分が寄越された明確な理由も分かっていないのに、護衛の臨時パートナーとして組まされて早々、長時間残業を強いてしまった結果は申し訳なくもあった。