噴き出すでもない血液と機械オイルが絡んだ爪先を引っ込めると、打ちだされかけた小型のミサイル弾を掴んで、大男の顎が外れて唇が裂けるくらいの容赦のなさで口に押し込んだ。

 ほんの僅かな沈黙の後、大男の胸から上が吹き飛んだ。一体どの『部品』か『部分』かも分からないものが弾けて、液体がぴしゃりと飛散する。

 ずん、と重量感ある音を立てて『残った部分』が崩れ落ちた。

 気付いてすぐ通話ボタンを切っていた宮橋が、携帯電話を持ったまま、しばし茫然と見つめていた。

 標的の『完全沈黙』を確認して、雪弥はスーツに付着した余計な物を手で払った。

「この後に及んでも、殺すな、というんじゃないでしょうね」

 蒼い光を帯びた冷ややかな目を、彼へと向けてそう言う。

「『壊』さなければ、きっと『コレ』は止まりませんでしたよ」

 戦闘痕でまだ少しだけ視界が悪い中、雪弥と宮橋の目がじっと見つめ合う。

 やがて宮橋が、ふぅ、と息をこぼして前髪をかき上げながら立ち上がった。