そちらへ注意を向けつつ、雪弥は再び彼と目を合わせた。

「宮橋さんから言わせると、こうして外の音が入って来ないのも、何かしら前もって仕掛けがされていたせいだ、というわけですか?」
「今の状況から考えるに、その可能性しか浮かばない。恐らくは僕らが踏み込んだ時点で、複数の術がゆっくり一つずつ発動していったんだろう」

 おかげでこの僕が気付くのが遅れた、と、宮橋が舌打ち交じりに言った。負かされるのも嫌いな性格であるらしい事が、なんだかよく分かる様子だった。

 現代の魔術師、ねぇ……なんだかやっぱり現実感がない。

 今のところ雪弥としては、それこそ自分と関わりがあるのかも不明瞭な第二の術者の有無よりも、その者の目的よりも、まずの気掛かりが一つ。

「あの女の子は無事なんでしょうか?」
「君も察しているだろう、彼女はもうこの建物にいない。もしかしたら途中から完全な幻影だったのかもしれないが――今となっては、どちらであるとも判断は付かない」