「…………君、これまで見た中で一番活き活きしてるなぁ」

 考えを見て取ったらしい宮橋が、若干げんなりとした様子で呟く。

 よく分からなかった雪弥は、彼に目を戻してきょとんとして言った。

「宮橋さんの護衛って、こういう意味でもあったんですね」
「馬鹿言え、日常的にこんな事があってたまるか。僕のは『見えない方』の事情であって、今回は巻き込まれているだけだぞ」

 目をパチリとした雪弥に向かって、宮橋は続けて言いながら指を向けた。

「恐らくは、君だよ」
「僕?」
「君の件で、あの鬼の男の他にも動いている者がいるらしい。魔術師として有る僕にも察知出来ないくらい、巧妙に動ける奴がね」

 宮橋が、苛々した様子で詰め寄ってそう言う。

「そうでなければ、あの少女が鬼化しかかっている現象についても説明が付かなくなる。たかがツノが出ただけで、怪異としての無音状態も引き起こせないはずだからね」

 その時、向こうで何かが動く気配がした。

 雪弥と宮橋は、一度言葉を切って物音がした廊下の向こうへ目を向けた。床を鈍く這うようやく、引きずるような、それでいて歩くみたいな重量感ある音――に聞こえなくもない。