階段は、このビルで日常的に使用されていたかのようにして横幅も結構あった。各階ごとにポッカリと開けた出入り口があり、大きな踊り場がフロアと繋がっている。

 率先して進む雪弥は、着物の裾しか目に留まらない少女を追って、マイペースに歩き階段を上がっていった。

 どうせ走ったとしてもまた見失う。

 かといって、これ以上ペースを落としたら見失うかもしれない。

 そう考えると違和感も覚えた。先程から妙な感覚があり、ここへきてますます雪弥の中で増してもいる。そして――少し気になっている事もあった。

 やがて五階部分へ到達した。その踊り場が視えるところまで来たところで、少女が羽織った着物を揺らして、ぼんやりとした横顔でフロアへすーっと進んでいくのが見えた。

 やはり、違和感。

 雪弥は、開いた瞳孔で入口を目に留めたまま、一旦やや歩みを落とした。念のために所持している銃を取り出すまでの速度を換算してから、宮橋を自分の後ろに置いた状態で進み出る。