「幽霊でもなく、あれは彼女本人さ」
宮橋が、隣を走りながらそう声を投げてきた。
「身体が『向こう』からの影響を受けて、一時的に曖昧な存在になっている。そのせいで、ただの人間であれば通れないはずの『向こう側』を出入りしている状態なんだよ」
「それって、普通だと通れない不思議な道って事ですか?」
「まぁね。特殊な血筋の者が、たまに似たような『道』を通る事はあるが――ただの人間なら正気を失う」
ツノまで生えてしまっている彼女は、ぼんやりとしていて意識もない状態だ。正気を失っているから出入り出来ているという事なのかなぁ、と雪弥はやっぱりよく分からなかった。
どれくらい追いかけっこを続けていただろうか。
気付けば、静まり返った夜の街の一角に来ていた。そこには古びた大きな建物が一つ建っていて、工事用の柵がされている中へと少女が入っていく。
敷地内には、工事用の道具も置かれてあった。建物は、玄関口と窓ガラスが既に外されている。ふわりと進んでいく彼女の着物の裾に気付いて、雪弥も建物の中へと足を進めた。
宮橋が、隣を走りながらそう声を投げてきた。
「身体が『向こう』からの影響を受けて、一時的に曖昧な存在になっている。そのせいで、ただの人間であれば通れないはずの『向こう側』を出入りしている状態なんだよ」
「それって、普通だと通れない不思議な道って事ですか?」
「まぁね。特殊な血筋の者が、たまに似たような『道』を通る事はあるが――ただの人間なら正気を失う」
ツノまで生えてしまっている彼女は、ぼんやりとしていて意識もない状態だ。正気を失っているから出入り出来ているという事なのかなぁ、と雪弥はやっぱりよく分からなかった。
どれくらい追いかけっこを続けていただろうか。
気付けば、静まり返った夜の街の一角に来ていた。そこには古びた大きな建物が一つ建っていて、工事用の柵がされている中へと少女が入っていく。
敷地内には、工事用の道具も置かれてあった。建物は、玄関口と窓ガラスが既に外されている。ふわりと進んでいく彼女の着物の裾に気付いて、雪弥も建物の中へと足を進めた。