「見失った……? おかしいな、そんなに時差もないはず」
そう口にしながら見回したところで、居酒屋の脇道に入っていく彼女の姿に気付いた。宮橋が追い付く中、雪弥は「気のせいかな」と呟きつつ再び走り出す。
それは一度だけではなく、それから何度も続いた。途中、本気になって足場のコンクリートを砕いて急発進してしまったものの、それでもやっぱり彼女の姿を一時的に見失ってしまうのだ。
どんなに速く走っても、工夫を凝らしてみても、結局のところ距離が縮まる様子はない。
やがて雪弥は、気付くと宮橋と足並みをそろえるように一緒になって追っていた。
先程の苦労と変わらず、その少女は視線の先にいる。ふわり、と揺れる着物と揃えられた黒髪。ゆらりと現われては消えるみたいに、彼女は同じ距離感でもって前にいるのだ。
頭には長く白いツノも生えているのに、たまに表通りに出て居合わせた人達も、たまたま目を向けておらず気付いていないかのようだった。
そう口にしながら見回したところで、居酒屋の脇道に入っていく彼女の姿に気付いた。宮橋が追い付く中、雪弥は「気のせいかな」と呟きつつ再び走り出す。
それは一度だけではなく、それから何度も続いた。途中、本気になって足場のコンクリートを砕いて急発進してしまったものの、それでもやっぱり彼女の姿を一時的に見失ってしまうのだ。
どんなに速く走っても、工夫を凝らしてみても、結局のところ距離が縮まる様子はない。
やがて雪弥は、気付くと宮橋と足並みをそろえるように一緒になって追っていた。
先程の苦労と変わらず、その少女は視線の先にいる。ふわり、と揺れる着物と揃えられた黒髪。ゆらりと現われては消えるみたいに、彼女は同じ距離感でもって前にいるのだ。
頭には長く白いツノも生えているのに、たまに表通りに出て居合わせた人達も、たまたま目を向けておらず気付いていないかのようだった。