その女の子は、私服の上から羽織っただけの着物を、ゆっくり揺らしながら歩いているだけなのに、やっぱりどんなに追いかけても距離が縮まらなかった。こちらが道を曲がった頃には、彼女の姿は既にその先の曲がり角にあったりする。

 ふわり、ふわりと、亡霊のように消えては現われているみたいだった。

 チラリと過ぎった発想を、雪弥はまさかと笑って考え直した。今度こそ宮橋の仕事を終わらせるべく、カチリと目の前の事へ意識を向けて集中する。

「先に行って捕まえます」

 一応、宮橋にそう声を掛けた。彼の方から「――多分、そうは出来ないと思うけどね」と、ポツリと考えるような声が聞こえてきたが、気に留めなかった。

 たまに居合わせる一般人に迷惑をかけないよう調整しつつ、ぐっと足に力を入れると、一気に加速して裏通りを走り抜けた。

 だが、その少女の姿を追って表通りへ出たところで、「あれ?」と雪弥の足は止まった。彼女の姿がどこにも見えない。