舌打ちされた……しかも、かなり嫌そうな顔だ。

 腕を組んだ宮橋にギロリと睨まれ、雪弥は「だからこうやって先に確認したのに……」と呟いてしまった。

「いいか雪弥君。先に言っておくが、僕をお姫様抱っこしたら承知しないからな。今度やったら、僕の方が君をお姫様抱っこして町中を闊歩する刑にするぞ」
「えぇぇ。でも担ぐとなると結構揺れますけど――」
「是非とも担げ、二度と前で持つな」

 雪弥が心配して述べたら、宮橋がビシリと不機嫌マックスな顔で断言してきた。

 まぁ本人がそう言っているのだからいいのか、と護衛対象でもある彼を思った。髪やスーツをバサバサと揺らしていく夜風の中、「今更なんですけど」と美麗な刑事を見つめ返す。

「そもそも、どうして女の子が出たとお分かりに?」

 そう尋ねたら、宮橋が当然だろと告げるような顔をした。

「『見える』からそう言っている」

 ふんっと偉そうな感じで見下ろされてもしまった。

 回答を受けた雪弥は、なんだかなぁと困った顔をした後、

「それじゃあ失礼します」

 と、今度はきちんと声をかけてから、宮橋を後ろの方で担いだのだった。