見晴らしがいい『高い所』まで連れて来ただけなんだけどなぁ……きちんと両手で持ったのに、そこもまた叱られてしまったのを思い返して、雪弥は不思議に思いながら目を戻した。

 そこには町の夜景が広がっていた。地上よりもやや強い夜風が吹き抜けていて、行き交う車の白や赤のライトが風景を彩る一つとして流れて行く。

 あの少女を見失ってしまったのは、自分のせいなのだろう。

 でも、ただ保護するだけだと思っていたのに、まさかあんな事になっているとは想像してもいなかったわけで――。

「女の子にツノがはえてるとか……」
「言っておくが、通常なら有り得ない事で、僕だって驚いている」

 思い返して溜息交じりに呟いたら、隣からそう宮橋が口を挟んできた。

「そういえば宮橋さん、そんな事を言ってましたね」
「僕らが返したのは『子』の骨なんだ。特別な亡骸ではあるから欲しがるモノは多いが、人間にとってはただの同族の骨。それだけで鬼になれるはずもない」

 しばし雪弥のコンタクトの黒い目と、彼の明るいブラウンの目が見つめ合う。