「…………あの、宮橋さんが夜歩きに対しては、怒っていないというのは分かりました。でも……――なんか怒ってますよね?」

 思わず尋ねると、宮橋が「それとこれとは別でね」と言って、ゆらりとこちらへ顔を向けてきた。

「一通り歩き回ったのはいい。その後が問題なんだよ、雪弥君」
「その後と言うと、ついさっきの『今』ですか?」
「そうだ。あっという間に僕を担いで、一つ飛び出この屋上まで来た事については説教したい気分だ。面倒だからやめるが――いいか、とりあえず二度とするな」
「はぁ、すみません……」

 つい先程、高い場所からの方が見渡せるな、と宮橋が思い立った様子で口にしたのを聞いた。だから雪弥は、じゃあ行きますかとココまで連れてきたのだ。

 それなのに到着早々、「この僕を驚かせるとはやるじゃないか」とギリギリ頭を掴まれたあげく、こうしてビルの縁に腰掛ける前に、拳骨まで落とされてしまっていた。

 まぁ、痛くはなかったのだけれど。