しばらくもしないうちに、町は夜に包まれた。

 看板や店明かりが、星の光も霞むほど都会を彩っており、がやがやと行き交う人々の声もあって賑やかだ。飲み屋街を通った際には、男達が「次の店に行くぞー!」と騒ぐ陽気な声とすれちがい、日々頑張っているご褒美みたいだ、元気な町だ、と雪弥は感じたりした。

 そうしている間にも、どんどん夜は深まっていった。

 二十二時を過ぎると、町中の賑わいようも少しずつ落ち着き出した。車や人の数が次第に減り始め、二十三時を回ると深夜営業の店の他はシャッターも降りていった。

 まだ、あの女の子は見付かっていなかった。

 あれからずっと町中を歩き回ったものの、頭にツノを持ち、着物を羽織っている、という目立つ姿は、夕刻のあの遭遇以来は目に留まっていない。

「――まさか、刑事であるこの僕が、深夜徘徊をする事になろうとはね。これだと完璧に残業みたいなものじゃないか」

 柔らかな髪を夜風にバサバサと吹かれている宮橋が、フッと乾いた笑みを浮かべてそう言った。