闇夜姫に恋を囁く



やっと部屋に光が入り出す。
宏弥はほとんど眠れずに朝を迎えた。

予想はしていた。
突然の答え合わせに出くわしたものの、驚いてはいない。
反面疑問は湧いてくる。

以前理事長が言っていたのは、新月と満月の祈祷。
なのに昨日はどちらでも無い。
二日連続で祈祷をしていた事を心配していた点を考えると、本来そういうことはしないのだろう。
ならイレギュラーなことが起きているということだ。

宏弥は身体を起こし、長い前髪を書き上げてため息をついた。
コーヒーでも飲んで目を覚ました方が良い。
宏弥はのそりと立ち上がって部屋を出た。

キッチンに居たのは隆智。
まだ朝七時前だがタオルやスポーツドリンクを用意している。

「おはようございます。
もしかして世依さん、熱を出しているんですか」

宏弥が隆智に声をかけると、おはようと言った後、そうなんだよと答える顔は疲れが出ていた。

「隆智くんも疲れているようじゃ無いですか。
もしかして熱が」

「いや俺は無いよ。単に寝不足」

宏弥に答えながらも隆智は手を動かしている。

寝不足と言うには顔色は良くない。
出来れば宏弥としては看病を変わって隆智に寝ているように言いたいが、きっとそれは許されない。

「ならせめて朝食を僕が作ります。
簡単なものになりますが」

隆智はその申し出に安心したような顔で、

「助かるよ。
とりあえず世依に薬飲ませてくる」

隆智はそう言うと用意した品々を持ってキッチンを出て行った。

宏弥は以前のことを思い出す。
世依が熱を出し、甲斐甲斐しく隆智が看病していたときのことを。

闇夜姫は万能では無い。
祈祷は非常に力を使うとされている。
おかげで宵闇師達の能力は上がるし、そもそも闇夜姫が出てくる時点で状況は切迫しているか悪いのだ。

二日連続で祈祷した、それがおそらく体調を崩した原因だろう。
最初は彼女じゃ無いと思っていた。
段々と彼女じゃ無ければ良いと思うようになり、それは真実から目をそらしていることも自覚していた。

彼女はどんな気持ちで自分と接していたのだろう。
必死に隠れこの時代まで闇夜姫と宵闇師を続けている者達の存在を暴こうとする人間を。

だからこそ今弱っている彼女に近づくのは彼女も、そして彼も嫌だろう。
宏弥は頭を振ると、まずは朝食を作る為に冷蔵庫を開けた。