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世依と宏弥は穴八幡宮に近い低価格のファミレスで食事を終え、家に向かい歩道を二人で歩く。

最初その場所を言い出したのは世依で、宏弥はもっと落ち着いた場所が良いのではと提案した。
だが友人達で流行っている食べ方があるとか、デザートも食べたいからと言うのでその場所にした。
世依自身美味しいと食事していたが、宏弥はおそらく自分の懐を配慮してここにしたのだろうと思っていた。

こういう職業はおしなべて給与が低い。
大学なども奨学金で通ったという話をしたため、宏弥が食事代を持つと言ったことで世依に気を遣わせてしまったようだ。

家に近くなり、

「世依さん、今日の食事場所、僕が食事代を持つと言ったので気を遣わせてしまいましたね、すみません」

少し前を歩いていた世依の肩が、わかりやすいほどにびくりとする。
世依は振り返ること無く、

「邪推だよ。言ったじゃ無い、流行の食べ方に興味があったって」

「それは本当だとは思いました。ピザに別注文のジャガイモ乗せたりしてましたし」

「美味しかったでしょ」

「はい。それで一つ今後の気遣いを減らしてもらおうかと」

世依が立ち止まり振り返ると不思議そうな顔を宏弥に向ける。

「祖母が亡くなったときに家を売却したと言いましたが、家の名義は祖母から僕に早々に変更されていました。
なのでその売却して得たお金が少し入りまして。
それを元手に資産運用をしているんです。
株や外国債券、他にも少々。
おかげでそれなりには生活していける貯蓄はあるんですよ」

世依は宏弥の説明を聞き、目を丸くした。
失礼ながらそういうことに一切興味も無く、最低限のお金で最低限のことが出来れば良いと思うような人間だと思っていたからだ。

「ごめん、凄く意外。
そういうのどうでもいい人だと思ってた」

珍しい物を見るかのように世依が宏弥を見るので、彼女はどんな印象を自分に持っていたのかと考えると面白い。

「こういう曖昧な仕事ですからね、研究をしたいなら自分で稼いでおかないと調査にも出られないので。
現に前の大学では一年ずつあるはずの更新が無くて、お世話になっている教授が学長に掛け合ってくださったんですよ。拾ってやって欲しいと」

宏弥が家のカギを出してドアを開け、世依に先に入るよう促す。

ありがとうと言いながら世依は、

「前の大学ってクビになったの?」

「そう宣告はされませんでしたが、更新が無かったので学長に拾ってもらえなければ今頃まだ就職活動中かも知れませんね」

まだ聞きたいという顔をしている世依に、

「とりあえず世依さんはお風呂お先に。
僕のお風呂が終わってまだ世依さんが起きていられそうならリビングで話しましょう」

「まだ八時過ぎくらいで眠くならないから。
じゃ、あとでリビングに集合ね!」

絶対に聞くという決意をみなぎらせ手を洗いに脱衣所に走って行く世依を見て、宏弥は自然と口元が緩みながら階段に向かった。