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皇居を目の前にしたパレスホテル。
その中にある、懐石料理店にある個室。

部屋の奥にある大きな窓からは、明るいビルの夜景と少しだけ照らされた皇居の堀が見渡せる。
平日夜ともあってまだビルの灯りは煌々と輝いていた。

夜の八時、この場所で食事をし歓談していたが、水菓子が出てスタッフが下がると一人の男が頃合いを見て周囲を見渡す。

「では皆様タブレットをご覧下さい」

各自手に持っているタブレットを見れば写真が写っている。
スライドすると何枚もあり、そこいたのは宵闇師を追放された佐東と闇夜姫を研究している朝日奈宏弥が立ち話していたり、カフェで話しをしているところだった。

次に佐東が既に辞めた宵闇師や複数の男女と会っている写真が何枚も出てきて、隆智は眉間に皺を寄せた。

後藤が皆がある程度確認し終わったのを見て、

「発端は、妻を看病するために辞めた片岡からの情報でした。
『妻の見舞いに病室へ佐東が来た。そこで真の宵闇師とならないか』と言われたと。
片岡は意味がわからず、また宵闇師に戻って貰うために片岡が使いとして来たと思ったようです。

片岡の方が先に辞めたので佐東が追放されたことを片岡は知りませんでした。
片岡は責任感のある男、佐東とも当然立場的に親しかったので疑うこと無く力になれるならと答えました。

そしてしばらくして再度連絡があったそうです。
『闇夜姫を私的に利用する上層部を告発しようとしたらはめられた、今の守護者達は特に信用できない。どうか片岡も気をつけて欲しい』と」

化粧をバッチリ整え身体のラインを強調したスーツを着ている鹿島が、良く言うわ、と呆れかえっている。

「驚いた片岡は一番親しかった扉番でもあった岡田に連絡をし、遠回しに状況を探ったようです。
そこで佐東が追放された理由で食い違い、岡田が私、後藤の所へ情報を持ってきたのが事の流れです」

ここにいるのは、宵闇師の上層部、守護者達。

佐東の裏切りをしていた証拠を集めていた後藤、鹿島、闇夜姫の影武者である彩也乃、守護者筆頭の隆智、そして守護代である隆士郎の五名。
闇夜姫である世依はここにはいない。
隆智は仕事で遅くなると世依と宏弥に伝え、おそらく二人で外食でもしているはず。

他の守護者が護衛に付いているが、祭りで世依に因縁をつけてきた男達を宏弥が撃退した報告はその日護衛につけていた守護者から報告を受けた。
それから世依が宏弥により懐いているのを知っている。
隆智としては色々と複雑だが、とりあえず身の安全は保障されそうだと今日も外食を許可した。

夏頃、宵闇師の一部に不穏な動きなどという情報に皆神経を使っていたところ、宏弥と接触があったということで各自情報収集をして今回の会議が開かれた。

もちろんこの事を闇夜姫に報告はしていない。
そもそもそういう事を報告をする必要が無いからだ。

宵闇師の問題は自分たちで片付けるべきで、そんな事実を知って闇夜姫を悲しませるようなことは誰もしたくはない。

隆智が険しい顔をしているのに気付きながら後藤は続ける。

「その後佐東は朝日奈助教が遠方に一人になった所を狙い接触、しかし朝日奈助教は佐東とまともに話さずに席を立っています。
普通に考えれば何かとの対価に闇夜姫の情報を渡す、と話したと思われますが彼がそれを蹴った可能性が高いと思われます」

「彼はそういう男だよ。
勘が良いからね、信用できないと思ったんだろう」

「しかし守護代、彼は闇夜姫を知りたくてこの大学まで来たのでしょう?
全く情報を得ないで別れるなんて事、あるんでしょうか。
もしかして裏では繋がっている可能性も」

真剣な鹿島に隆士郎も頷く。

「確かにその可能性はゼロじゃ無いだろう。
だが彼は彼なりのルールで動いている。
闇夜姫を汚すような行為をしている者を信じたりすることが無いほど、彼は闇夜姫に一途なんだよ」

なるほど、と微笑む鹿島とは反対に、隆智はムッとしたような顔をしているがタブレットを弄りながら、

「俺の調べでは朝日奈助教が佐東側に付いていることは無い。
それは調査結果で出ている。

ただ、大学内に佐東側の宵闇師がいるのは間違いないだろう。
なんせ大学内の防犯カメラは全ての場所を網羅できる訳じゃない。

あの朝日奈助教だって、書庫にある防犯カメラの死角をわかっている。
時々そこに移動しているのは、彼が見られている、聞かれているのを前提で動いているからだ。
出来れば裏切り者も頭が回らないヤツが数名いると楽なんだが」

面倒そうに隆智が言うと、お疲れさまと彩也乃が笑いかけ隆智は苦笑いした。