時刻は、午前十一時半頃だった。
サイドミラーに映った自分の顔を見た萬狩は、髪が伸びている事に気付いた。そういえば、最後に散髪したのは梅雨の時期の、買い出し以来だったと遅れて思い出す。
近くに大型スーパーに隣接した小さな理髪店があるのだが、萬狩は以前、仕上がりの速さと値段の安さに惹かれ、一度だけそこを利用した事があった。
沖縄に越して来てからは行きつけの理髪店もなかったから、軽い気持ちで利用したのだが、なかなか良かった事を覚えている。
冷蔵庫の食材や飲料水も少なくなっていたので、ついでにスーパーで何か買おうかと考え、萬狩は、この地区で唯一の大型食品店へと車を走らせた。
※※※
自宅からだと二十五分、ピアノ教室からだと十分ほどの距離にあるスーパーは、平日ということもあって駐車場の空きが多かった。
安いその理髪店は、以前寄った時と同じように、四人ほどの客が既にカット席に腰かけていた。狭いながらも清潔な店内には、五人の中年スタッフがいて、萬狩が入ってすぐ、一人の中年男性がやって来た。
「現在席が埋まっておりまして、十分ほどお待ち頂く事になりますが、よろしいでしょうか?」
黒々しい髪にパーマをあてたその中年男性は、彫りの深い顔を寄せて、申し訳なさそうにそう告げた。一見すると怖い雰囲気をした男なのだが、声は通っており、物腰も非常に柔らかい。
萬狩は「構わない」と答えた。待ち合い席に設けられているソファに腰かけ、経済新聞を手に取ってしばらく眺めた。数ページほど読み進めたところで、女性スタッフが「お待たせしました。こちらへどうぞ」とカット席に案内した。
サイドミラーに映った自分の顔を見た萬狩は、髪が伸びている事に気付いた。そういえば、最後に散髪したのは梅雨の時期の、買い出し以来だったと遅れて思い出す。
近くに大型スーパーに隣接した小さな理髪店があるのだが、萬狩は以前、仕上がりの速さと値段の安さに惹かれ、一度だけそこを利用した事があった。
沖縄に越して来てからは行きつけの理髪店もなかったから、軽い気持ちで利用したのだが、なかなか良かった事を覚えている。
冷蔵庫の食材や飲料水も少なくなっていたので、ついでにスーパーで何か買おうかと考え、萬狩は、この地区で唯一の大型食品店へと車を走らせた。
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自宅からだと二十五分、ピアノ教室からだと十分ほどの距離にあるスーパーは、平日ということもあって駐車場の空きが多かった。
安いその理髪店は、以前寄った時と同じように、四人ほどの客が既にカット席に腰かけていた。狭いながらも清潔な店内には、五人の中年スタッフがいて、萬狩が入ってすぐ、一人の中年男性がやって来た。
「現在席が埋まっておりまして、十分ほどお待ち頂く事になりますが、よろしいでしょうか?」
黒々しい髪にパーマをあてたその中年男性は、彫りの深い顔を寄せて、申し訳なさそうにそう告げた。一見すると怖い雰囲気をした男なのだが、声は通っており、物腰も非常に柔らかい。
萬狩は「構わない」と答えた。待ち合い席に設けられているソファに腰かけ、経済新聞を手に取ってしばらく眺めた。数ページほど読み進めたところで、女性スタッフが「お待たせしました。こちらへどうぞ」とカット席に案内した。