睡眠不足も体調に影響しているのかもしれないと思いついたのは、吐き気に悩まされながら目覚めた、月曜日の早朝の事である。

 普段なら日の出よりも早く目が覚める萬狩だったが、その日は、カーテンの向こうがすっかり明るくなってしまっていた。

 時刻は午前七時頃で、胃のむかつきに顔を顰めつつリビングに向かうと、シェリーは、花壇が見える窓辺側でくつろいでいた。

「なんだ、お前。起こしてくれてもよかったじゃないか」

 急ぎの用事があるわけでもないが、時間を損してしまった気分だ。萬狩は、気温が少しだけ落ち着いている、僅かに潮の香りを含む沖縄の朝の空気が一番気に入っていた。

 朝一番のご飯もねだりに来なかったシェリーは、小首を傾げ、それから欠伸を一つもらした。

 起こしてくれたのか、起こしてくれなかったのか分からない態度だ。萬狩は、深夜にもご飯を食べているせいで、この老犬は朝一番に腹が減っていない可能性について考えた。食事に関わらない場合は、目覚めの共として役に立たないようだ。

「まぁいいさ。睡眠をたっぷりとれて、俺の身体の疲労も取れた事だろうよ」

 萬狩は一人そう言い、冷蔵庫から冷水を取り出して口に含んだ。

 それでも胃の辺りに覚えるむかつきに変化はなく、自分の症状が、軽い日射病から夏バテへと移行している事を遅れて察し、――萬狩は「くそ、老いが憎い」と肩を落とした。

 本日は月曜日であったので、午前九時には仲村渠(なかんだかり)がやって来た。
仲村渠は萬狩を見るなり「若干痩せましたかな」と首を傾げ、手土産だといって、スポーツ飲料水とカロリーメイトを手渡した。

「なんですか、これは」