シェリーと仲西の支度が済んだ後、冷房機の電源を入れてテレビを付け、二人と一匹で食事をした。

 仲西青年は、食卓に並んだ唐揚げ弁当を見るなり、「マヨネーズが付いていないです……」と寂しそうに言うので、萬狩は、仕方なく冷蔵庫からマヨネーズを持って来てやった。勿論、自分の分としてケチャップは忘れていない。

「え、なんですか。唐揚げにケチャップって」
「お前もマヨネーズをかけるだろう。似たようなものじゃないか」
「違います、全然違いますよ、萬狩さん。唐揚げだったらマヨネーズか、タルタルソースですって」
「うちの息子達もケチャップだった」

 妻はマヨネーズ派だったが、唐揚げといえば、当然この二択が普通だろうと思っていた萬狩にとって、仲西青年の過剰な反応は不思議でならない。

 萬狩が食事を食べ始める様子を眺めていた仲西が、「はぁ」と感慨深そうな息を吐き、ようやく唐揚げに、たっぷりとマヨネーズを落とした。

「萬狩さんって、ポテトフライにケチャップをたっぷりつける人なんですか?」
「ポテトフライは、トンカツソース派だ」
「チョイスがすごく捻くれてるッ」

 仲西が、まるで信じられない、というような悲鳴を上げた。

 そんなに驚く事でもないだろうに。

 そう萬狩は目で語りつつ、怪訝そうに仲西青年を睨みつけた。

「じゃあ、お前はポテトフライにはケチャップをつけるのか?」
「僕はチーズソース派です」
「それこそ店にはない特殊品じゃないか」
「一級品の美味さなんですけどねぇ。友人の間でも流行っているのに、なかなか商品としてセットで出て来ないんですよ」

 世間一般では特殊であるらしい事を、仲西はあっさりと認めた。

 互いの声が途切れた時、BGM代わりに流れていた午後一番のニュース番組が、昼のドラマ番組に切り替わった。