「本当にすみませんでした。悪気はなかったんですけど、本気で楽しくなっちゃったんです。雑草にもたっぷり水分をあげたかも……。って、萬狩さん、聞いてます?」
声を掛けられて、萬狩は我に返り「ああ」と反射的に言葉を返した。
誰かに「お帰り」と言われたのが、どれぐらい久しいか、萬狩はつい先程まで忘れていたのだ。先程「お帰りなさい」と笑った仲西青年の顔は、息子達とは雰囲気もまるで異なっているというのに、なぜだか重ねてしまっていた。
もし、生き方が少しでも違っていたら。
息子達のあんな笑顔が見られたかもしれない未来を想像して、萬狩の心は凪いだ。
そうか、俺は後悔しているのか。だから、こんなにも過去と、つい最近の出来事ばかりを思い出すのかもしれない。
萬狩は頭を振ると、素直すぎる誠実な青年に向かって「怒っていない」と冷静に告げた。
「要するに、お前には雑草に水をあげてくれていたんだろう」
「え……?」
「いいさ。そろそろ、水分でも必要だと思っていたところだ。雨も降らないから、雑草刈りの張り合いもなくなっていて暇だったんだ」
萬狩はテラス席に腰を降ろすと、煙草を取り出した。こちらを茫然と見つめている仲西に気付いて、「なんだ」と顔を顰めて見せる。
「二人とも楽しかったんだろう? 世話を任せていたから、礼に弁当を買ってきた。時間があるなら勝手に食べていけばいい。もう正午過ぎだぞ」
「えッ、もう正午なんですか!?」
仲西は、慌てたようにズボンの後ろポケットから携帯電話を取り出し、時刻を確認して飛び上がった。
「うわっ、やばい。シェリーちゃんの昼食時間の予定を二十一分も押してるッ」
「ふわん」
「うんうん、運動したからたっぷりご飯上げるけど、まずは身体を拭かないとね」
声を掛けられて、萬狩は我に返り「ああ」と反射的に言葉を返した。
誰かに「お帰り」と言われたのが、どれぐらい久しいか、萬狩はつい先程まで忘れていたのだ。先程「お帰りなさい」と笑った仲西青年の顔は、息子達とは雰囲気もまるで異なっているというのに、なぜだか重ねてしまっていた。
もし、生き方が少しでも違っていたら。
息子達のあんな笑顔が見られたかもしれない未来を想像して、萬狩の心は凪いだ。
そうか、俺は後悔しているのか。だから、こんなにも過去と、つい最近の出来事ばかりを思い出すのかもしれない。
萬狩は頭を振ると、素直すぎる誠実な青年に向かって「怒っていない」と冷静に告げた。
「要するに、お前には雑草に水をあげてくれていたんだろう」
「え……?」
「いいさ。そろそろ、水分でも必要だと思っていたところだ。雨も降らないから、雑草刈りの張り合いもなくなっていて暇だったんだ」
萬狩はテラス席に腰を降ろすと、煙草を取り出した。こちらを茫然と見つめている仲西に気付いて、「なんだ」と顔を顰めて見せる。
「二人とも楽しかったんだろう? 世話を任せていたから、礼に弁当を買ってきた。時間があるなら勝手に食べていけばいい。もう正午過ぎだぞ」
「えッ、もう正午なんですか!?」
仲西は、慌てたようにズボンの後ろポケットから携帯電話を取り出し、時刻を確認して飛び上がった。
「うわっ、やばい。シェリーちゃんの昼食時間の予定を二十一分も押してるッ」
「ふわん」
「うんうん、運動したからたっぷりご飯上げるけど、まずは身体を拭かないとね」