個人経営の小さなピアノ教室は、比較的新しいコンクリート造りの建物の一階に入っていた。二階部分は住居らしい。教室内部は白いノリノウムが敷かれ、そこには五台の電子ピアノが置かれていた。
萬狩が訪問したのは、シェリーに昼食をあげて後の事だったが、午後の早い時間、その教室内に他の受講者の姿はなかった。
出迎えてくれたのは三十台中頃の細身の女性で、長い髪を後ろで軽くまとめ、清楚なロングスカートを自然と着こなしていた。彼女は愛想の良い笑みが似合い、笑った顔の雰囲気は、どことなく仲西に似ていた。
顔を会わせてすぐ、彼女は「内間です」と自己紹介してきた。萬狩もぎこちなく笑い返して「萬狩です」と答えた。
萬狩は電話で確認を取った際、週に二回通いの、一ヶ月間の受講を予定して三千八百円を払う事に決めていた。
まずは説明と受講契約を済ませるため、内間は萬狩を近くのテーブル席に座らせた。彼女は、教室のシステムや受講の流れを簡単に説明すると、教室内を見るよう萬狩を促した。
入室時には気付かなかったが、各電子ピアノのうえにはコードがまとめられたイヤホンジャックが置かれていた。内間の説明によると、これを電子ピアノに繋げて練習する事で、他の人に音を訊かれずに練習が出来るらしい。
「自宅にピアノが置けなくて、個人的な用事で練習に来て下さる方もいらっしゃいます。気が向いた時に弾かれる方にも好評みたいです」
「一通り教えてもらったら、あとは自主練習ということですか?」
「希望があれば、引き続き個人指導も行っておりますので、安心なさって下さい。私はいつでもおりますので、自主練習で分からないところや質問があれば、すぐに対応させて頂いきます」
萬狩が訪問したのは、シェリーに昼食をあげて後の事だったが、午後の早い時間、その教室内に他の受講者の姿はなかった。
出迎えてくれたのは三十台中頃の細身の女性で、長い髪を後ろで軽くまとめ、清楚なロングスカートを自然と着こなしていた。彼女は愛想の良い笑みが似合い、笑った顔の雰囲気は、どことなく仲西に似ていた。
顔を会わせてすぐ、彼女は「内間です」と自己紹介してきた。萬狩もぎこちなく笑い返して「萬狩です」と答えた。
萬狩は電話で確認を取った際、週に二回通いの、一ヶ月間の受講を予定して三千八百円を払う事に決めていた。
まずは説明と受講契約を済ませるため、内間は萬狩を近くのテーブル席に座らせた。彼女は、教室のシステムや受講の流れを簡単に説明すると、教室内を見るよう萬狩を促した。
入室時には気付かなかったが、各電子ピアノのうえにはコードがまとめられたイヤホンジャックが置かれていた。内間の説明によると、これを電子ピアノに繋げて練習する事で、他の人に音を訊かれずに練習が出来るらしい。
「自宅にピアノが置けなくて、個人的な用事で練習に来て下さる方もいらっしゃいます。気が向いた時に弾かれる方にも好評みたいです」
「一通り教えてもらったら、あとは自主練習ということですか?」
「希望があれば、引き続き個人指導も行っておりますので、安心なさって下さい。私はいつでもおりますので、自主練習で分からないところや質問があれば、すぐに対応させて頂いきます」