萬狩は呆気に取られた。少し前から気になっていた彼らの関係について、ここで尋ねてみる事にした。

「あなた方は仲がいいようだが、以前からの知り合いなのか?」
「彼が小学生の頃、私が犬を診てやった事がきっかけですね。児童会や町内会のイベントによく呼んで、――ああ、ビーチパーティーで海に放り投げてやったのは、楽しかったですねぇ。まぁ何かと付き合いが続きまして、しばらく那覇の学校にいっていたと思ったら、いつの間にか立派な大人になっちゃっているんだもの」
「……横の繋がりが広い」

 萬狩は、仲村渠老人が喜々として少年を海に放り投げる想像が止まらなかったが、そこについては深く考えない努力をした。

 妙な人達だ。本当に、なんていうか、変な人達だと思う。

 シェリーが顔を上げ、大きな欠伸を一つした。仲村渠がそれを見て、「いい感じに疲れたのでしょう」と柔和に笑った。

「恐らく、二、三日は大人しくしているでしょう。昨日の疲労が残って朝の食事量も少なかったと思いますから、一度に食べられないなら、ご飯は小まめに分けてあげて下さい」

 最後は獣医らしい事を言うので、萬狩は、そのアドバイスに対しては素直に「それはどうも、ありがとう」とぎこちなく会釈を返した。

 固定電話機の横に立てられている時計へと目を走らせれば、時刻は午前の十時を過ぎていた。

この老人獣医は、一体いつになったら帰ってくれるのだろうか。仲西青年は昨日の別れ際に、「朝はちょっと別件があって、ちょっと遅れますッ」と言っていたが、彼の方は何時に来るのか分からないんだが……?

 付き合いが続いて分かったが、なんとも自由な感じの人達だ。