仲西青年が持ってきたサンダルはピンクだったので断り、萬狩は開き直って靴と靴下を脱ぎ、ほとんど伸びきる事がないリードを片手に、素足でシェリーと共に波際をゆっくりと歩いた。
海側から流れてくる潮風は、潮の香りをまとって時々遊ぶように優しく砂を巻き上げた。シェリーが途中、打ち寄せる波に思い切り前足を入れ、その水飛沫が風に押されて、萬狩のシャツにまでかかった。
シェリーは水を全く怖がらず、海の中に足を浸からせて平気で歩いたので、萬狩も仲西も、しまいにはズボンの裾を膝まで曲げて、気ままに進むシェリーに従うように歩いた。
けれど彼女は体力があまりないようで、十数分ほどで足取りはゆったりとなり、自らブルーシートのもとへ引き返すように歩き出した。
仲西が「やっぱり波の中を歩くのがサイコーですッ」と膝まで水中に入れて歩き、彼が気ままにざぶざぶと立てる音が、萬狩にはなんだか可笑しかった。
二人はシェリーの後に続いて波際まで出たのだが、ふと、向こうからやってくる人影に気付いて思わず緊張した。
腕に黄色い腕章をつけた若い男が、ゴミ袋を持って歩いていた。海を管理している人間の一人らしい陽に焼けた肌に、鍛えられている逞しい筋肉が、シャツとズボンからは覗いていた。
擦れ違いざま、男は行儀の良いシェリーを見て微笑み、それから萬狩と仲西に向かって「おはようございます」と声を掛けてきた。萬狩は不慣れな会釈を返し、仲西が、安堵した顔で挨拶を返した。
男との距離が少し離れた後、仲西が萬狩に「良かったですね」と耳打ちした。
「僕らの事を親子と見て、すっかり警戒していない様子でしたねッ」
「おい。誰が親子だ。相手もそうは思っていないだろうよ」
というより何時の間にそんな設定になっていたんだ、と萬狩は呆れた。
海側から流れてくる潮風は、潮の香りをまとって時々遊ぶように優しく砂を巻き上げた。シェリーが途中、打ち寄せる波に思い切り前足を入れ、その水飛沫が風に押されて、萬狩のシャツにまでかかった。
シェリーは水を全く怖がらず、海の中に足を浸からせて平気で歩いたので、萬狩も仲西も、しまいにはズボンの裾を膝まで曲げて、気ままに進むシェリーに従うように歩いた。
けれど彼女は体力があまりないようで、十数分ほどで足取りはゆったりとなり、自らブルーシートのもとへ引き返すように歩き出した。
仲西が「やっぱり波の中を歩くのがサイコーですッ」と膝まで水中に入れて歩き、彼が気ままにざぶざぶと立てる音が、萬狩にはなんだか可笑しかった。
二人はシェリーの後に続いて波際まで出たのだが、ふと、向こうからやってくる人影に気付いて思わず緊張した。
腕に黄色い腕章をつけた若い男が、ゴミ袋を持って歩いていた。海を管理している人間の一人らしい陽に焼けた肌に、鍛えられている逞しい筋肉が、シャツとズボンからは覗いていた。
擦れ違いざま、男は行儀の良いシェリーを見て微笑み、それから萬狩と仲西に向かって「おはようございます」と声を掛けてきた。萬狩は不慣れな会釈を返し、仲西が、安堵した顔で挨拶を返した。
男との距離が少し離れた後、仲西が萬狩に「良かったですね」と耳打ちした。
「僕らの事を親子と見て、すっかり警戒していない様子でしたねッ」
「おい。誰が親子だ。相手もそうは思っていないだろうよ」
というより何時の間にそんな設定になっていたんだ、と萬狩は呆れた。