仲西は「必要品ですよね」と言いながら、後部座席に置いてある紙袋の中身を確認していた。シェリーが待ちきれない様子だったので、萬狩は彼に車のキーを預けると「鍵はちゃんとかけろよ」と告げて先に歩き出した。
※※※
足を踏み入れた砂浜は、予想していたよりも柔らかかった。ビーチなんて十年は行っていなかったのだが、あまりにも白く細かい砂地に驚いてしまう。
歩くたびに靴底が砂に埋まり、悪戦苦闘する萬狩の少し前を、シェリーが軽い足取りで進んだ。
「お前、そんなに優雅に歩けたのか」
萬狩が愚痴交じりに言葉をこぼすと、シェリーは、振り返りもせずに「ふわん」と、普段より高い声で誇らしげに鳴いた。
柔らかい砂場は、非常に歩き辛かった。靴は数分後には砂まみれになってしまい、萬狩は、それを睨みつけるように歩いていた。シェリーに波打ち際まで誘導されている事に気付かず、水分を含んだ砂に「うわっ」と声を上げた時には、タイミング良く彼が打ち寄せて、足首から見事に濡れてしまっていた。
罵倒の一つでもくれてやろうと顔を上げた萬狩は、しかし、眼前に広がる光景に言葉を失った。
どこまでも青い海を、地平線から顔を出した朝日が、一筋の光りの筋を作って照らし出していた。
もう陽が昇っていたのだなと気付いて視線を上げると、どこまでも澄んだ青い空と、深い色合いの海、その二つが交わる地平線も一望出来た。
「陽が昇りましたねぇ」
サンダルに履き換えた仲西が、後方からそう声を掛けながら、萬狩の靴へ視線を向けた。
「あちゃ~、やっぱり靴で入っちゃいましたか。濡れるし砂が大変だと思って、萬狩さんの分のビーチサンダルも持ってきたのに」
「言うのが遅い」
仲西は、慣れたように波が押し寄せない位置に小さなブルーシートを敷いて、持ってきた荷物を置いた。
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足を踏み入れた砂浜は、予想していたよりも柔らかかった。ビーチなんて十年は行っていなかったのだが、あまりにも白く細かい砂地に驚いてしまう。
歩くたびに靴底が砂に埋まり、悪戦苦闘する萬狩の少し前を、シェリーが軽い足取りで進んだ。
「お前、そんなに優雅に歩けたのか」
萬狩が愚痴交じりに言葉をこぼすと、シェリーは、振り返りもせずに「ふわん」と、普段より高い声で誇らしげに鳴いた。
柔らかい砂場は、非常に歩き辛かった。靴は数分後には砂まみれになってしまい、萬狩は、それを睨みつけるように歩いていた。シェリーに波打ち際まで誘導されている事に気付かず、水分を含んだ砂に「うわっ」と声を上げた時には、タイミング良く彼が打ち寄せて、足首から見事に濡れてしまっていた。
罵倒の一つでもくれてやろうと顔を上げた萬狩は、しかし、眼前に広がる光景に言葉を失った。
どこまでも青い海を、地平線から顔を出した朝日が、一筋の光りの筋を作って照らし出していた。
もう陽が昇っていたのだなと気付いて視線を上げると、どこまでも澄んだ青い空と、深い色合いの海、その二つが交わる地平線も一望出来た。
「陽が昇りましたねぇ」
サンダルに履き換えた仲西が、後方からそう声を掛けながら、萬狩の靴へ視線を向けた。
「あちゃ~、やっぱり靴で入っちゃいましたか。濡れるし砂が大変だと思って、萬狩さんの分のビーチサンダルも持ってきたのに」
「言うのが遅い」
仲西は、慣れたように波が押し寄せない位置に小さなブルーシートを敷いて、持ってきた荷物を置いた。