「なるほど。つまり、お前の中ではアニメがブームな訳だな?」
「ついでに自慢しちゃうと、給料が入ったらお菓子の大人買いもします!」
「…………」

 お菓子を購入する機会もなく、息子達もそのような行動を取らなかったから、萬狩には、どうも理解し難い感覚だった。

         ※※※

 軽くシャワーを済ませて身支度を整えた後、萬狩は、セダンの車の後部座席に仲西とシェリーを乗せ、仲西の道案内で目的の場所へと向かった。

 白み始めた空に雲の影はなく、冷房の効いた車内で流れる沖縄放送のラジオからは「本日もご機嫌なほど晴れそうですね」と女性の声が語っていた。

 萬狩は後部座席を気にしながら、慎重に車を走らせた。

 予想していた以上にシェリーが大人しくて安心したのだが、仲西青年の方が「上等な車ですね」「CDはないんですか」「シェリーちゃん優雅に座っちゃって、利口な子だねぇ!」と犬よりも興奮した様子で、萬狩は心底呆れてしまった。

 日曜日の早朝という事もあり、車の走行は少なかった。萬狩が運転するセダンは国道をスムーズに進み、自宅から少しの距離にある、名護の整備された海浜公園へと到着した。

 広い駐車場には、数台の車がまばらに停まっていた。

 歩道側でジョギングをする若い男女、犬を散歩する中年の女性、海岸沿いで釣り竿を構えている中年男性の姿があったが、砂浜には誰もいなかった。

「最近出来た場所で、入口も分かり辛いから、あまり人が来ないんですよ」

 シェリーに散歩用の紐を繋いだ仲西が、リードの先を萬狩に手渡しながらそう言った。

 犬のリードを持つのは、上の息子が小学生だった頃に、友人から預かった以来だ。萬狩は、不慣れなリードを何度か持ち直した後、大人しく足元に座っていたシェリーに「いいか」となんとなく尋ねてしまった。シェリーは一度だけ彼を見上げて、それから、一つ肯いた。