シェリーは、嫌がりもせず首輪を受け入れた。長い毛の間から覗くオレンジ色の首輪は、確かに彼女に良く似合っていた。
シェリーは首輪の着け心地を確かめるように少し歩くと、満足げに座り、「ふわ」と鳴いたのだった。
※※※
早朝散歩の決行当日、空が白んだばかりの時刻。ちょうど新聞を取りに向かった萬狩は、玄関先で仲西青年と遭遇した。
仲西は右手に小さなクーラーボックス――人間用と犬用の飲料水が入っている――と、左手にはタオルと着替えと濡れティッシュに、他にもシェリーの世話に必要になるであろう用品を詰めた紙袋を持っていた。
駐車場を見れば、黒の原動付きバイクが停まっていた。
恐らく、クーラーボックスは足元にでも置いていたのだろうが、萬狩は、仲西青年の張り切り具合には呆れてしまった。
「お前、出る時に時間は見たのか? 人様の家を訪ねるにしても早いし、今はまだ朝の五時を過ぎたばかりなんだが……」
「おはようございます、萬狩さんッ。僕は夜の十時には就寝したので、体調はばっちりだから問題ないです!」
「……いや、やっぱりいい。うん、おはよう」
早朝の頭で、萬狩は深く考える事を止めた。普段は犬の世話係と、その家の持ち主という関係だが、今日は互いにプライベートであることを不思議に思いつつ、仲西を家の中へ招き入れた。
珈琲とパンで朝食中だった萬狩は、はじめの数分は、どうしようか迷ったものの、結局はいつものように仲西青年を勝手にさせる事にした。
仲西青年は慣れたように部屋に上がり、朝食中のシェリーの隣に座り込んで「おはよう、シェリーちゃん」と頭を撫でた。プリントTシャツに、スウェットズボンを着た仲西青年は、二十代そこそこにしか見えなかった。
息子達よりも若干年上、という概念が、どうも持てないでいる。萬狩は、しかし諦めて朝のニュース番組へと目を向けた。
シェリーは首輪の着け心地を確かめるように少し歩くと、満足げに座り、「ふわ」と鳴いたのだった。
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早朝散歩の決行当日、空が白んだばかりの時刻。ちょうど新聞を取りに向かった萬狩は、玄関先で仲西青年と遭遇した。
仲西は右手に小さなクーラーボックス――人間用と犬用の飲料水が入っている――と、左手にはタオルと着替えと濡れティッシュに、他にもシェリーの世話に必要になるであろう用品を詰めた紙袋を持っていた。
駐車場を見れば、黒の原動付きバイクが停まっていた。
恐らく、クーラーボックスは足元にでも置いていたのだろうが、萬狩は、仲西青年の張り切り具合には呆れてしまった。
「お前、出る時に時間は見たのか? 人様の家を訪ねるにしても早いし、今はまだ朝の五時を過ぎたばかりなんだが……」
「おはようございます、萬狩さんッ。僕は夜の十時には就寝したので、体調はばっちりだから問題ないです!」
「……いや、やっぱりいい。うん、おはよう」
早朝の頭で、萬狩は深く考える事を止めた。普段は犬の世話係と、その家の持ち主という関係だが、今日は互いにプライベートであることを不思議に思いつつ、仲西を家の中へ招き入れた。
珈琲とパンで朝食中だった萬狩は、はじめの数分は、どうしようか迷ったものの、結局はいつものように仲西青年を勝手にさせる事にした。
仲西青年は慣れたように部屋に上がり、朝食中のシェリーの隣に座り込んで「おはよう、シェリーちゃん」と頭を撫でた。プリントTシャツに、スウェットズボンを着た仲西青年は、二十代そこそこにしか見えなかった。
息子達よりも若干年上、という概念が、どうも持てないでいる。萬狩は、しかし諦めて朝のニュース番組へと目を向けた。