訝しげに思いつつ仲西青年を見やれば、無邪気な眼差しで彼の返答を待っていた。

 いつもの萬狩であったなら、妬みや嫌味で詮索しているのかと疑うのだが、仲西青年の子供じみた瞳の輝きを見ると、違うようにも思えるから扱いに困った。

 約二ヶ月間の付き合いで、萬狩は、仲西青年の性質について把握しつつあった。若いこの青年は、今時の青年にしては珍しく物事を深く考えない人間で、人を疑わず、憎まず過ごしており――つまり全く悩みもない日々を過ごしているようなのだ。

「……一人暮らしだが、何か?」

 その質問に深い意味はないだろうと結論し、萬狩は、長い居ュん順の間を置いて、そう答えた。

 すると、仲西青年が呑気な表情のまま、実際の年齢よりも幼く見える瞳を、より一層輝かせた。

「お暇そうですね」
「お前、それは嫌味か?」

 もしかしたら、これは性質の悪い嫌がらせの一環なのかもしれない。

 萬狩は思わず顔を引き攣らせたが、仲西がすぐに「違いますよ~」と陽気に否定した。

「萬狩さんは、まだ元気いっぱいって感じですし、お仕事はされていると思うんですけど、時間があり余ってそうですし、実を言うと僕は日曜日が休みなんです!」
「……すまない、話の脈絡が全く見えてこないんだが。俺が老いているせいで、君とのコミュニケーション能力に隔たりでも出来ているのか?」
「萬狩さんは、作家か何かですか?」
「おい。また話が飛んだぞ」

 一体何なんだ、と萬狩は目頭を指で揉み解した。

「今日は、やけに質問が多いじゃないか」
「いいから、いいから。で、どうなんですか?」
「……まぁ、在宅勤務のようなものだ」
「じゃあ日曜日は暇がありますよね? 僕はバイクしか持っていないんですけど、後部座席でシェリーちゃんの面倒は見れますし、だから海に行きましょうよ!」
「は……?」

 萬狩が思わず、呆れ返った視線を向ければ、仲西青年が無邪気な微笑みを浮かべた。